潜行・浮上

我々人間は、陸上生活生物である。 その我々が水中に入り、水棲生物を相手にするためには特殊な技能を必要とする。 中でも習得が難しく、個人的な能力の差が出やすいのは潜行・浮上といった能力だろう。 ここでは、スピアフィッシングというスポーツに携わるに際して必要となるレベルでの水中潜行・浮上について触れたいと思う。

 

 

 

 

 

潜行①:ジャックナイフ

※これはジャック・ニコルソン。 ハリウッド俳優である。 特にこの項では論じない。 ただインターネットで使える写真を探していたら検索にかかってきてしまっただけである。  あまり気にしないで欲しい。 

 

浮力を最小に。

 

タンク等を使用し海に潜るスキューバダイビングとは違い、閉塞呼吸潜水(アプネアダイビングともいう、いわゆる素潜り)という分野においては、潜行つまり潜るという行為は常に垂直運動を意味する。

潜行の向きが斜めであったり、潜行の途中で横に向かって移動したりするならば、潜行距離の増大すなわち余剰エネルギーを無駄に消費することを意味する。

機会があれば、ぜひ経験豊かなお婆さんの海女さんを捕まえて、どうやったら海に上手に潜れるか聞いてみて欲しい。 

『体を垂直にすれば良いのよ~。 勝手に沈んでいくわよ。』 

彼女らの答えは非常に単純明快だ。 

そしてこれは事実に即した答えでもある。

上に述べるように、もし斜めに潜ろうとするならば潜行距離は増大する。  が、実は問題はそれだけではない。 潜行運動に入る際、まず問題となるのは水圧である。 水圧は上方向からの働きよりも下からの働きの方が大きいため、まず潜行しようとすると体を上に押し返す力(浮力)が働く。 これが潜行運動の妨げになる最大の原因である。

そこで出来るだけ下方から受ける力を最小にして、横方向上方向からの水圧を持って、体勢を安定させたいということになる。

それはどういう姿勢かというと、垂直である。  下方には体の先端部分のみ一点を向け、その他の部分は全て、横方向(厳密には反対側の体先端部分は一点のみ上方向)に面している状態。  これが理想的な潜行姿勢なのである。

※右の写真参照

体が斜めになると、下からの力を受ける面が増えてしまうので、どうしても潜行しにくい。

同じ力で漕いでいてもぜんぜん潜れない。 これではどうしても、息があがるばかりで深くは潜れない。 そこで体を垂直に持っていく技術『ジャックナイフ』が必要になってくる。

 

それでは、実際に水平に泳いでいるところからどのように体勢を垂直に持っていくかを説明しよう。 ※左の写真参照。矢印の位置に注目してもらいたい。潜る際、× 印がしてあるところからジャックナイフに入ろうとする人をよく見かけるが、あれは間違いである。 正しくは体の重心の中心、お腹の位置まで体の先端を持っていきそこから潜行を開始する必要がある。

体は“折る”ように曲げるのではなく“巻く”ように、自分の腹を実際に見るように曲げることを心がけると良い。尚、この写真を見てわかるように潜行を開始する前にはスピアガン・手銛の類も、潜行位置まで持っていっておかなければいけない。この人はスピアガンの先端を下方へ向けていないが、これも本来は真下へ垂直に向いていなければならない。

さて、潜行開始。1枚目の写真に矢印で示した場所。重心の位置と寸分違わない場所から潜行を開始しているのがわかって頂けるだろうか。この際、自分の潜行していく場所をトンネル、またはパイプのようにイメージするとわかりやすいだろう。自分はそう、そこに滑り込んでいくドリルのような存在になるのである。

完全に垂直になった状態。細かいことだが、この時ダイバーの手が下に伸びていることに気付かれるだろうか。これはほんの些細なことだが非常に重要である。彼の頭の中のイメージが理想的なパイプラインを描いていることを示唆するものだからである。ジャックナイフの際の脚の動かし方には何通りかメソッドがあるが、情報過多になるためここではあえて触れないことにする。

 

 

 

 

潜行②:潜行姿勢

さて、上の項に述べる順序に従って身体が垂直になった、さぁこれから実際に潜行を開始するわけである。

 

その時あなたの目線はどこを見ているか?

 

これがここで、非常に大事になってくる。

 

このコーナーは主にこれから本格的に水深を増やしていきたい人を対象としているため、

現在の勝負水深が大体10m前後の方を前提としている。

 

10m前後の水深が勝負水深である場合、潜行を開始する際に既に海底が見えている、ということが考えられる。

 

そのためか、非常に多い例が “ 海底を見ながらそこを目指して潜っていく ” というものだ。

 

これは魚を見つけるためなど、正しい状況もあるにはあるのだが、こと潜行姿勢という観点においては間違っている。  

 

何がどう間違っているのか。 

 

図を交えて説明していきたいと思う。

 

 

 

※右図参照

この女性は真っ直ぐに海底を見つめ、そこを目指して潜行している。

 

…つもりになっている。 が、実際には彼女は斜めにジグザグに潜行して行かざるを得ない。

 

なぜか?  それは彼女の生み出す推進力が斜め方向に傾いてしまっているからだ。

 

2枚フィンは水を“蹴る”ことではなく、正しくは“挟む”ことによってその挟み込む方向へ向かって水を押し出していく。

 

図を見てもわかるように彼女の推進力が斜めに傾いてしまっているのは明らかだろう。

 

ではなぜ彼女の体勢はそのように傾いてしまったのだろうか?

 

 

それは、彼女が海底を見ようとして顔を上げてしまい、

結果首を反らせてしまい、同時に背中も反らせてしまったからだ。

 

水の抵抗力に対して身体全体が三日月のように反っていては、真っ直ぐに潜っていけるわけがない。  

 

子供でもわかる道理である。

では、次に正しい姿勢をすぐに見てもらうことにしよう。

 

違いがわかっていただけるはずだ。

 

(※めんどくさがりなMoCCiは自分の写真を撮ってきたりすることはしない。 よってこの写真はどっかから引っ張ってきたものである。 『あ! これ俺だ! 勝手に使うなよ!』とか野暮なことはどうか抜きにして欲しい。 ダイバーの育成のため、どうか暖かい目で見守ってくれ。 俺は君が大きい心の持ち主であると信じているぞ。 うん。 

あ! てかこれ女だなよく見たら。 ww)

 

彼の目線はどこを見ているだろうか。  

海底? いいえ、海底は見ていません。  

そう、潜行していく際にまず大事なポイントは

『潜行方向を見ない』ことです。

 

他にも細かいことはいろいろありますが、割愛します。

 

とにかく、まず心がけるのは下を見ない!

 

見ない!!  見るな!!  見!る! な!!

首を反らすな背筋反らすな!

三日月ダメ!

 

 

頭の中で思い描いた自分のパイプラインの中を

まっすぐに落ちていく自分の姿を心の目で見るべし!! 

 

 

次は…フィンワークですね。

 

 

 

 

 

潜行③:フィンワーク

フィンワークに関しては腐るほど技術があるので、本当に端折って書きます。

 

最低限ここに書くことを心がけてもらえたら、あとは工夫次第で自分のスタイルにしていって良いと思います。

 

 

 

 

    大きく分けて順番に

 

 

     A:振り幅

     B:挟み込み

     C:力を入れるタイミング  

 

 

       を書いていきます。 

A:振り幅

フィンキックの基本その1は振り幅のコントロールです。

多くの場合、私が他の人の潜り方を見てまず気になるのはこの点です。

振り幅の崩れた潜り方は一目で見てすぐにそれとわかります。

上の項でも既に述べた潜行姿勢の崩れや、ここに述べるフィンの振り幅の乱れは全て連結しています。

 

どちらに関しても、正しい意識を持つことで改善していくことが出来るので、つまらない文章で申し訳ないのですが我慢して読んでみて下さい。  きっと役に立てて頂けるはずです。

 

それでは、振り幅について説明するためにフィンキックを2つに分類します。

 

まず、つま先の方向に蹴り上げるキックを『フロントキック

そしてかかとの方向に蹴り下げるキックを『バックキック』と呼びます。

 

陥りやすい間違ったフィンワークは、このフロントキックのみに意識を集中してバックキックが適当でいいかげんなものになってしまうケースです。

 

正しいフィンワークは、このフロントキックとバックキックの力を均等に、また同じだけの幅を振ることが鍵になっています。

 

※下の図をご覧下さい。 (あくまでフィンキックの例です。理想的な潜行姿勢ではありません。点数をつけるなら80点くらいの潜り方です。)

潜行の先端部を中心として垂直に線を引き、そこからフィンの支点となる部分を矢印でつないでみました。

 

中心から、等しい幅でフロントキックとバックキックが行われているのが見て取れると思います。  これが正しいフィンワークの『基本』です。

フロントキックにしろバックキックにしろ、この矢印の幅からハミ出すようなキックをするならば潜行姿勢の崩れにつながりそれが潜行方向の乱れになり潜行能力の低下を招きます。

少し上の方で延べた、潜行姿勢の崩れとフィンワークの乱れの関連性について少し例をあげます。

 

潜行姿勢の崩れに一番多い例が、海底を見ることにより首が反ってしまい、背中が反ってしまうことですが・・・ こうなると、フィンキックはおのずからフロントのみに意識を集中するものとなってしまいます。  

 

どんな特徴が現れるでしょうか。

 

・『ピロピロピロ・・・パタパタパタ・・・』とせわしなくフィンキックのピッチが早くなる。

・太ももの前面ばかりが疲れる。 

・なかなか沈んでいかず-10m前後で息が上がりそうになり、すぐに浮上したくなる。

 

思い当たるふしが有る人は、上に述べること、またこれから進めていくフィンワークの項を合わせてぜひ参考にしてみて下さい。

 

※  これは私ではありません。

 GOOGLE検索で登場してきたどこかのおっさんです。

 

フィンの振り幅の確認、またイメージ作りにはこうした

平行棒のようなものが役に立ちます。 

別にこのおじさんのようにトレーニングする必要は無い

ので、腕を伸ばして足が地面から浮いた状態を作って

やり、フィンワークをしてみて下さい。

平行棒の代わりに椅子などを並べて乗っかることも出来ます。

ただしその際は体重をかけても倒れないかどうか十分注意してください。

 

変なトレーニングして怪我しないでね。 俺責任とらないよ。 

うふふ。

 

 

B:挟み込み

フィンワークを考える時、重要になってくるのは、その対象としての『水』という存在をどう捉えるか・・・という点である。

 

この対象物に対して、意識下のもとで、フィンをどういう形で“触れ合”わせるのか?

考察してみたいと思う。

 

簡単なことではあるが、ここに述べる意識の違いは、実践することにより、大きな違いを生むものとなる。

 

巷でよく耳にする表現にこういうものがないだろうか?

 

※ 『フィンで水を押し出す。』 『フィンで水を蹴る。』

 

これ自体は決して間違った表現でもないし、確かにその通りである。

しかしながらここに意識的な落とし穴があると私は考える。

 

どの運動に関しても言えることだが、人間は運動時には、頭の中で考えた理想の形に近づけようと肉体を動かしていく。

 

さて、それでは上に述べる動作(※黄色字の部分)を今、頭の中で思い浮かべてほしい。

 

思い浮かべる動作は・・・きっと、

 

 

 

フロントキックだけではないですか? 

 

強く水を蹴りだそう、強く押し出そう』と考えると、つい

 

ひざを曲げて、思い切りフロントキックをすることを考えてしまいます。

 

そうしないと力いっぱい『押し出す』ことは出来ないですからね。

 

 

しかしながら、水の中で、出来るだけ速く潜行していくために、

本当に”力いっぱい”押し出すことが有効なのでしょうか?

 

私は・・・必ずしもYESではないと思っています。

 

 

この点については後で詳しく述べることにしますが、

論点をずらさぬように、

 

話を元にもどしましょう。

 

意識下で

水を押し出そう、蹴りだそう』とするとおのずから →  意識がフロントキックのみに傾倒しがちである、ということです。

 

これではフィンキックは片足ずつの独立したものとなり、連動性が失われ、また、

非常に重要なバックキックがおろそかになるという弊害も生みます。

 

 

それでは、どのように意識下で『水』という対象を捉えたらよいのでしょうか?

 

基本中の基本です。

 

それは『水を挟(はさ)む。』ということです。

 

 

 

 

これはハサミです。

 

 

みなさんよくご存知のごく一般的なハサミです。

 

これで、ある物をはさむところを想像してみましょう。

もしたまたま両方持っていて、可能なら実験してみるのも良いでしょう。

 

はさむものはこいつです。

ピンポン玉。 

硬くて軽くてシュルシュル滑る、ニクイ奴です。

こいつを挟むと、どうなりますか?

 

さぁ想像してみてください。

※あんまりハサミの先っぽで挟まないで下さい。 

ガバっと開いて挟んでね。

 

 

まぁいろいろな結果が出るでしょう・・・が、

おそらくこれを想像して(もしくは実験して)もらえば、私の伝えたいこともわかってもらえるかと思う。

 

つまるところ、これは例えです。

 

ハサミはフィンで、ピンポン玉は水を表しています。

 

上と下の刃が挟み込んで均等に力が加わると、ピンポン玉は潰れずに押し出されてすっぽ抜けますが・・。

 

 

 

これと同じことがフィンと水の関係でも起こることがわかるでしょうか?

 

均等に水を挟んであげることによって、行き場を求めて水は後方に『逃げて』いきます。

 

これが、

効率的な推進力を生み出す、しくみです。

 

ロングフィンにまだそれほど慣れていない人は特に、

またそうでない人も、

 

折に触れて自分のフィンワークを見直してみることは重要です。

ほんの少しのフォームの崩れで潜行深度は大きく変わってきますので、

ちょっと『ん?』と感じたら

 

『自分の後方の中心にあたる位置でフィンが綺麗に交差しているかどうか?』

 

『フィンとフィンが交差してすれ違う時、スキマが開きすぎていないか?』

(※ハサミのように、スリ合うように挟み込まないと推進力減、姿勢の崩れの原因となる。)

 

といった自問をしながら自己チェックしてみて下さい。

 

さて・・・次は

 

 

C:力を入れるタイミング 

 

潜行時のフィンワークについては、ジャックナイフ直後(要するに潜り始め)と、その後に続く安定潜行状態(浮力が弱まり、姿勢が安定して潜行していく段階)においては、それぞれ異なったテクニックがあるが、この項では安定潜行状態においてのテクニックについて述べていきます。

 

(※加えて、潜行時と浮上時では働く浮力・重力の条件が異なるため、力を入れるタイミング、テクニック等、全て異なる点も合わせてご了承下さい。) 

 

一つ、

この項については、非常に難解な文章にせざるを得ないことをどうか了承頂きたい。

 

ただしここに述べることを文章にして皆が閲覧できる状態で公開することの価値はそこそこあるのではないかと思う。

 

よってもし読解する段階で、理解しにくく感じたり、より詳細な説明を要すると感じられる方がいるならば、どうぞ遠慮なくお尋ね下さい。

 

喜んでお答えいたします。

 

 

さて、前置きが長くなってしまったが、本題に入ろうではないか。 うん、そうしよう。

 

 

あなたは、

 

潜行する際、どのようにフィンを動かせば良いと思いますか?

 

早く潜って行きたいと思うだろうか。 

そのために強く蹴ろうとしますか? 

 

もしそうすれば、メリットに対して、以下のようなデメリットが付いてくることを考えて欲しい。

 

力強く蹴れば・・・・

メリット:

推進力は強くなる。

デメリット:

姿勢が乱れやすくなる。

酸素の消費量は増加する。

姿勢が乱れ、また潜行速度がイレギュラーになるため、魚に警戒心を与えやすい。

 

 

魚突きをする場合、潜行時に重要になってくるのは、

いかに酸素を消費せず、魚を散らさぬように静かに、かつ効率的に

潜行していくかである。

 

 

よって、まず認識して欲しい点は、むやみにフィンを力強く蹴ることはあまり得策とは言えないということだ。

 

まして潜行時には、浮力が徐々に弱くなっていくため、実はそれほど強く蹴らなくても、

『身体をまっすぐに、垂直に保つこと。』

この事を忘れなければ、グングンと潜行スピードは加速していくのである。

 

 

アーツかれたちょっと休憩。 

海豹旅団